2023.1.13 『BLUE REFLECTION RAY/澪』の感想(ネタバレあり)

アニメ版のブルーリフレクションこと「澪」を完走しました。

シリーズを通して見ると近年でも稀に見る思い入れのある作品だったので、忘れないためにも感想を書いておこうと思います。

 

アニメだけではなくシリーズ全体を通したネタバレを含むので、観たくない人は注意。

 

かなり観てよかったと思える部類の作品でした。

平成を思わせる作画は確かに序盤は気になったし、リズと青い鳥レベルの超絶作画で紡がれるこのアニメを観たいと思ったこともあったけど、中盤頃からはもう話に夢中になりすぎて気にしてる暇が無かった。

普段アニメを見て泣く時ってカタルシス?って言われるような感動によるものが殆どなんですが、例えば恐怖とか悲しみみたいな、ある意味では本来登場人物達が感じているような感情で泣いたりしてました。それぐらいにはのめり込んでた。

ようやく会えたお姉ちゃんと対立しなきゃいけなかったり、大事に想ってる友人を傷付けてしまう等の悲しいシーン満載の8話~12話の辺り、本当に毎回泣いてました。

 

まず凄く丁寧に描かれてますよね。24話もあるのにその1話1話が間違いなく必要な回だし、その中にも蛇足と言えるようなシーンがおおよそ存在しない…

回想シーンで1話丸ごと使う回なんかも何度かあって、登場人物達の生い立ちをかなり丁寧に描いてくれていたように感じます。

しかもまだ明らかに描き切れていない要素がいくつもあるように思います。一部は帝に持ち越されてたり、燦に持ち越されることが予告されているものもあるようですが、それとは別の根本的なものでも結構あるような気がする。

 

実際、アニメ公式垢の質問箱では多くの補足情報が記されてます。「それ本編で描かないんだ…」ってクラスのデカめの情報もあるので観たほうが良い。

 

世界観はかなり暗めでした。治安が悪すぎる。

援交少女は蔓延ってるわ通り魔は居るわ。親は何故かみんな毒親だし。

最初は平原姉妹の母親も「帝の描写的に色んな考え方出来るなぁ」とか考えてたんですけど、観終わった後だとほぼ間違いなく育児に疲れて失踪パターンなんだろうなと確信出来ます。

 

これに関連する話だと思うんですが、思考に関してのバグ(上手い言い方が見つからないのでこう書く)に対しての解像度が高すぎる。PS版lainを彷彿とさせます。

仁菜ちゃんの母親はほぼ間違いなく躁鬱な訳ですけど、一応の美少女アニメで引き合いに出す病気として躁鬱ってだいぶコアでは…?しかも「本当に怖いのは躁の時」ってちゃんと言ってる…

その台詞が的を射てるのかはイマイチ判断が付かないところですが、仁菜ちゃんが詩に対して言い放った「孤独を冷笑で誤魔化す」とか「ありきたりなメンヘラ女」みたいな評価も生々しすぎる。もっと言うとそれを受けた詩がそれまでの余裕無くしてキレてるのもリアルなんじゃないか。

その詩ちゃんに関しても試し行動っぽい言動が見られたり。挑発で仁菜ちゃんが振り向いてくれなくなったら相手の要求通りに呼び方変えてるのとか。

 

作品の根幹にもなってくる話ですが、曖昧な自他境界も代表的な思考のバグだと言えると思います。ボーダーもその被害者もここがガバガバになってしまうパターンが多い訳ですから。

その前提での紫乃加乃姉妹の悲劇は鳥肌モノです。あの母親が姉妹に対してしたことってある意味自他境界を強制的にバグらせる行為とも言えると思います。

よくあんな非道行為思いついたなって思う。

宗教以外にも社会問題がたくさん盛り込まれてましたね。毒親とかもまさにそうだし。

 

そんな暗い世界観でありつつも、優しさに満ち溢れた話だったと僕は思ってます。

ルージュリフレクターの人達とは物語上の立場としては一貫して敵対し続けることになる訳ですが、相手を「排除しよう」とするのではなくて常に「悪事を止めようとする」という立場を取っていた印象です。

台詞として言ってるだけではなくて、敵対する人物のことも本当に理解しようとしてたんだろうなというのは強く感じます。

陽桜莉は最後まで全てのキャラにちゃん付けだったのも印象的。

 

ところで平原陽桜莉視点から描かれるシーンが全然無いのが憎いですね、、、

このおかげで美弦の回想回においての陽桜莉の暴走の説得力が増すといいますか。

主人公でありながらも万能ではないキャラクター性が本当に魅力的。僕がアニメ版を評価してる理由に陽桜莉の存在は間違いなくあります。

 

で、優しさに満ち溢れた話とか言ったのにこんなこと言うのもアレなんですが、終始灰が降り注いでるの不穏すぎますね…

せっかく日菜子、陽桜莉と守り継いできた世界なのに帝の時間軸に到達するまでの間にまた一回崩壊する訳ですからね…

なんならこの後に出てくる燦でも世界を守り切ることが出来ないことが確定している訳ですね… あまりにも残酷すぎる。

 

でもだからこそ帝のラストで愛央によって救われた世界の存在が大きくなる訳なので、帝を最後まで遊びましょう!ってことですね。

という訳なのでもう一周してきます!