こういうタイプの記事書くの、なんだかんだ初めてな気がする。
「あなたは夕霧綴理であって、スクールアイドルではない。
……そう言われた。」
活動記録第4話におけるこの台詞がかなり引っかかっているので、これについて考えを深めてみよう、というテーマの記事です。
書きながら考えている部分が大きいので、読み返した時に矛盾がたくさんあったりもするのかもしれない。ご了承ください。
以前僕は別の記事でこれを「ほぼ間違いなく乙宗梢の台詞である」としたのですが、これは多分軽率だったな… と思っています。
別に可能性が薄いかというとそうでもないんですが、他にも色んな可能性はありそうだな、と考え直したという話です。
まず、この発言をする可能性のある人物の候補について考えてみます。
一年生の頃に同じスクールアイドルクラブに所属していた乙宗梢、藤島慈。
今まで一切描写されていない夕霧綴理の家族。
もしくは我々にとってはモブキャラに過ぎない一般生徒達、果てはステージを見た蓮ノ空とは全く関係のない一般人… etc.
「可能性が0ではない」という意味で言えば候補は無限に考えられると思います。
ただ、僕にとって「かなり重要なファクターであろう」と感じる台詞があります。
「来年誰かと一緒にステージに立てたら……
綴理もスクールアイドルだよ…… って、先輩に言われただけ。」
活動記録第6話『わがまま on the ICE!!』にて。
綴理にとって大事なライブとさやかの別件が重なってしまったという話の中での台詞です。
この「大事なライブ」についてもだいぶモヤッとしていて考察の余地があると思うのですが、今回は背景の部分は考えないで文字通りの部分だけに着目してみようと思います。
クラブ外の人間関係に関しては正直考えようがない部分だと思うので一旦除外すると、綴理から見た"先輩"に当たるのって大賀美沙知だけなんですよね。
第102期のスクールアイドルクラブには梢、綴理、慈、沙知しかいなかったはずなので。
これ、かなり違和感のある台詞だと思います。
「来年誰かと一緒にステージに立てたら……」とは何なのか。elseだったら"スクールアイドル"とは呼べないのか。一人じゃダメなのか。
かなり思想の垣間見える発言に思えます。
この発言と「あなたは夕霧綴理であって~」を無関係だとはあんまり思えない。
でも我々はこれと極めて近い思想を持っていた人物を知っていて、それはもちろん夕霧綴理です。
これは少し無理矢理なんですが、僕は綴理がこの考えを持つようになったのはスクールアイドルクラブに加入して以降のことだと思っています。
シンプルに最初から「自分はスクールアイドルにはなれない」という考え方を持っていたら綴理はスクールアイドルクラブの門戸を叩いていないと思う。
蓮ノ空においては「伝統」という言葉が重要な意味を持っています。
楽曲だったり、衣装だったり、ユニットだったり。そういうものが大事なものとして受け継がれているのが蓮ノ空の特徴の一つです。
でも「伝統」ってある意味「呪い」にも近い性質を持っていると思うんですね。
例えば「伝統を大事にしなければいけない」は縛りに近い性質を持っていて、もしかしたら伝統と反対側にある革新の芽を潰してしまうかもしれない。
先輩から受け継いでしまった「スクールアイドルとはこうあるべき」とい思考が綴理を縛り付けてしまっていたのだとしたらそれはまさに「呪い」であると思う。
この話にはかなり綴理のパーソナルな考え方が関わってそうだなって思ってます。
リンクラのアプリでは一つのカードから各三種類のボイスを聴くことが出来るのですが、それはキャラクターのプロファイルを行う上で極めて重要なものとなっていて、中にはメインストーリーの伏線にもなりうるようなものもあります。
これは[DEEPNESS]UR 夕霧綴理の二回目の覚醒を終えると聞くことが出来るボイスです。
綴理の独特な比喩表現を交えた台詞の中でもかなり難解な部類で、自分もあんまり理解は出来ていないです。
多分なんですが、意訳するとこういうことだと思います。
「自分は人と同じことが分からない。だから謝ることしか出来ない。
自分以外の人が言う言葉が常に正しいと決めつけて、それに従えば自分は間違えることはない。
そう思ってずっと自分の心を閉じ込めていた。それが正しいのかは分からない。
何故ならば自分よりも梢の方がより自分の心を閉じ込めていたから。
でも、花帆とさやかが自分達の心を開いてくれた」
ただ、難解な文章の中に直接的で分かりやすい言葉も含まれています。
以下原文。
「僕じゃない誰かが言うことが、きっと正しいんだと思ってた。
そこに、僕の気持ちは多分… いらない」
「スクールアイドルとはこうあるべき」に通じる考え方を誰かから受信したとして、例えば梢だったら「それはあなたの考えでしかない」みたいに割り切れる可能性が高いと思うんですよ。これまた特に根拠は無いんですが。
でも「常に自分が正しくない」という思考になってしまう当時の綴理にとっては先輩からのその言葉がトラウマ級の大ダメージになってしまったんじゃないかという。
ちょっとここから脱線入ります。
このボイスの内容って自分は「眠る」ことと近いものを感じてます。
自分の考えを持たずに眠ったように生きる、みたいな。かなりフィーリングに近い部分になってしまうのですが…
そして綴理の特技は「寝るまでの速さは自慢」で、梢からも「ねぼすけ」と呼ばれてます。
そんな半年間を過ごしてきた夕霧綴理ですが、二回目の春がやってきて後輩が出来ます。
それが村野さやかです。
さやかは入学時点でスクールアイドルのことを殆ど知らず、綴理の演技に一目惚れしてクラブに入学する訳です。
言ってしまえば綴理の「スクールアイドルとはこうあるべき」という考え方に対してはかなり冷めた見方をしていて、本当に綴理の演技にだけ憧れて入部してきたまっさらな存在。
メタい部分で言うと目覚ましマークのアイコンを冠していて、綴理のことを毎朝起こしに来てくれる存在です。
今まで自分を縛り付けていた「こうあるべき」を真っ向から否定してくれたさやかとなら… と可能性を感じた綴理は、二人でDOLLCHESTRAというユニットを結成します。
このDOLLCHESTRAというユニット名は「ドール」と「オーケストラ」を掛け合わせた言葉で、ここで使われている「ドール」は何かに縛り付けられて自由ではないこと、「オーケストラ」はステージごとに豹変していく様を表している… らしいです。
そしてDOLLCHESTRAの一番最初の楽曲のタイトルは「AWOKE」というのですが、これは目覚めるという意味のAWAKEの過去形です。つまり直訳で「目覚めた」になります。
半年間「伝統」に縛られて自分の心を殺して眠るように生きてきた夕霧綴理の目を覚ましたのは、スクールアイドルの伝統に縛られてこなかった村野さやかだったのだ… 的な。
もしかしたらDOLLCHESTRAとは蓮ノ空女学院に植え付けられてしまった「伝統」という名前の呪いに対してのアンチテーゼの象徴となるユニットなんじゃないか… と思った。
「今ある形が常に正しいと思うな」みたいな。まさに選択肢は無限なんです。
そういう記事でした。終わり!